誌上モノづくりスクール/第5回「原価を計算し、原価低減活動を推進せよ!」
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第5回 「原価を計算し、原価低減活動を推進せよ!」株式会社アットストリーム 森本朋敦
原価計算というと、棚卸資産金額を計算し、損益計算書と貸借対照表を作成するためにしか使っていないという会社が少なくありません。
しかし原価計算の目的はそれだけではなく、企業経営において非常に重要な意味を持っています。
今回は、原価計算を有効活用し、競争力の向上に役立てる方法について考察します。
1、原価計算の目的
原価計算の目的は、主に以下の5つがあります。
正しく決算を行うために(1)の財務諸表作成目的がややもすると強調されてしまいがちですが、企業経営や生産現場において重要なのは、(2)売価決定目的や(3)原価管理目的です。
特に、生産活動に係る方々にとっては、原価計算をもとに原価管理活動、すなわちコスト削減活動をどのように進めるかということが最も重要です。
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2、原価計算とコスト削減活動
原価計算には様々な方法がありますが、ここでは生産ロットごとに原価を把握するロット別原価計算を例にして、原価計算とコスト削減活動がどのように結びつくかを考えましょう。
■ロスの削減(歩留の向上)
まず、ロット別原価計算の大きなフレームワークを述べると、下記のようになります。
各ロットに投入された原材料費と加工費とを合計した金額を、良品出来高で割って製品1個当りの原価が算出されるわけです。
ここで製品100個作るためのロット別原価(A)が1,000元であったとして、実際に出来た良品が100個(ロス率=0)の場合は、製品1個当たり10元です。
しかし、もし良品が50個(ロス率=50%)であったとすると、製品1個当たり20元ということになります。
実際には50個しか販売できるものを作っていないのに原材料も作業も100個分投入しているので高くつくのは当たり前です。
ですから、まずロス率を削減する、すなわち歩留を向上するというのは原価計算上も重要なことなのです。
このように、品質が上がれば必ず原価は下がります。製造業において品質が最も重要だと言われる理由はここにも� �るのです。
■稼働率の向上
先ほどの図に「加工費チャージレート」という言葉が出てきますが、これは作業時間当たりどれだけの加工費がかかっているかという単価を表す言葉です。
この加工費チャージレートの計算方法を含めて先ほどの図を展開すると下記のようになります。
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加工費チャージレートは、工程費用全体を工程の作業時間全体で割って出した単価です。
工程費用が10,000元、工程の持ち時間が1,000時間であった場合、これを単純に割って10元/時間というわけにはいきません。
例えば、老朽設備で頻繁に機械トラブルが発生し、実際は半分の時間しか生産できていない場合、10元/時間のチャージレートでは5,000元しか回収できないことになるからです。
従って、チャージレートを計算する場合には、稼働率を掛けた時間(=回収可能時間)で工程費用を割る必要があるのです。
この計算式から明らかなように、稼働率が上がれば、必ずチャージレートが下がり原価が下がります。
適切な日別作業計画の策定やシングル段取り化、機械の予防保全などの改善活動により、持ち時間を最大� ��ものづくりに活用するための改善活動が重要です。
■能率の向上
もう一つの重要な着眼点が出来高の向上です。
先ほどの図からも明らかなように、ロス率が一定であっても、ラインスピードが上がれば同じ作業時間で出来高が増えるので製品1個当りの原価は下がります。
自動化ラインのように機械が作る工程であれば、改善によってタクトタイムを短くすることによって、同じ時間でより多くの製品を生産できるので原価が下がるわけです。
例えば、タクトタイム15秒のところを12秒に短縮できれば、25%の生産量増大になり、20%の原価低減を実現できます。
これはセル生産方式のように人が作る工程でも同様で、作業効率を上げることにより原価を低減できるのです。
ただし、能率向上はそのままでは原価低減にならないことに注意が必要です。
プールの所有者はあなたはそれをオーバーするだろう
同じ生産ロット数であれば、能率が上がると作業時間は少なくてすみますから、一見すると加工費が下がり原価が下がるように思えます。
しかし全体の生産量が変わらないと、能率が上がった分だけ稼働率が下がりますから、加工費チャージレートが上がり、能率向上の効果は相殺されてしまいます。
能率向上は重要な改善活動なのですが、能率向上と同時に生産量(受注量)を増やすか、能率が上がった分だけ工程費用を削減するかしないと、原価低減の効果が出ないのです。このことをよく理解して原価低減活動を推進する必要があります。
また、「作業時間」といった時に、機械時間と人時間とのどちらを使うかには注意が必要です。
自動化ラインのように機械が作る工程では、人は運転監視などを行っているだけですから、人時間をいくら削減しても生産性は上がりません。
このような場合には、機械時間を使って原価計算を行い、機械時間が削減できれば原価が下がるというようにしなければいけません。
一方、人が前段取りを行い、その後に機械が製品を作り、再び人が後段取りを行うという工程の場合は、人の段取作業時間と機械の作業時間を足したものを作業時間としなければ原価改善に役立つ原価計算とは言えません。
改善ポイントが、人の段取作業と機械能率の両方にあるからです。
■ロットサイズにも着目する
原価低減においてもう一つ忘れてはならないのは、ロットサイズです。
ロットサイズが大きい場合は、作業時間のうちの段取時間が相対的に小さくなるので、ロットサイズが小さいものより製品1個当りの原価は下がります。
これは皆さんの日常感覚とも一致すると思います。作るまでに同じ手間がかかるなら、1回でたくさん作った方が効率的です。
但し、受注量よりたくさん作りすぎると在庫の山になってしまいますので、むやみにロットをまとめて作るというわけにはいきません。
そこで、ロットサイズ別の原価情報を営業にフィードバックして、大ロットで発注してもらえればいくら安く出来ますとか、小ロットでの発注の場合は、売価はいくらになりますとか、ロットの大小で価格決定をすることが重要です。
以上のように、自社の製品や生産の特徴からどのような原価低減活動が効果を発揮するかを特定し、それを反映した原価計算を行うことにより、現場の原価低減活動を強力にサポートしていただきたいと思います。
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