ブルーベリーの接ぎ木について(接木の方法・現状) ブルーベリー接木の方法・現状
ブルーベリーの接ぎ木が最近注目されています。
ハイブッシュ系品種を穂木として接木する接木苗についてまとめてみました。
シャシャンボを台木に接木をすることも可能なようですが
ここでは主にラビットアイ系品種を台木とする接木を主に扱います。
接ぎ木総論
接木栽培が行われ始めた理由
@)
ハイブッシュ系品種は果実が美味しく魅力的品種ですが
土壌適応性や耐暑性が悪いため栽培が難しく特に露地栽培はかなり困難でした。
そこで土壌適応性と耐暑性を兼ね備えたラビットアイ系品種を台木とすれば
これらの問題を克服できるであろうということで最近特に注目されています。
Top Home
接木の利点、欠点
@)利点
@ラビットアイ系品種が台木の接木苗であればpH5,8程度まで適応する
(土壌適応性がある)
A成長が早い
B耐暑性があがる
C露地栽培も容易になる
D果実が大きくなる場合がある
(接木ダローのMAXサイズが29mm8gという報告があります。
エンドウ農園さんのブログより)
E果実収穫量が増える
F1本の木で複数の品種を栽培することも出来る
A)欠点
@台木がサッカー・シュートを頻繁に発生させるので接ぎ木後の管理が大変
A枝の更新の際、接木より上のシュートでしか更新できない
Bコウモリガなど鉄砲虫に接合部より下で被害を受けると致命的
↑の利点、欠点は一応私の価値観で振り分けましたが
この中でも栽培する方の価値観によってはあべこべのものもあるかもしれません。
その他の特徴
木のサイズが大きくなる
根域が大きくなる(鉢栽培であれば根詰まりしやすい)
自根のハイブッシュ系よりは紅葉も遅れ※暖地では常緑化※してしまう品種がある。
(綺麗な紅葉は見ることが出来ない場合がある)
果実の酸度が若干低くなる場合がある
接ぎ木雑種が得られる場合がある
果実の熟期が遅れる・若干皮が厚くなる・という報告もあります。
※ 2008/02/25
常緑のプルの接ぎ木
葉は少ないですが緑のままです。
これでは綺麗な紅葉は期待できません。
※2007春には神奈川県湘南地区でスパルタン、チャンドラーが ほぼ常緑で、2008年の春は全て落葉したそうです。byしろくまさん ※2007/11/11時点で宮城県多賀城市で自根スパルタンが真っ赤なのに対し 接ぎ木は青々している報告があります。byおばたさん ブログ記事参照→「接ぎ木の方が紅葉は晩い?!」 |
Top Home
・
接ぎ木栽培の寿命について
ラビットアイ系台木の接ぎ木については5〜6年生くらいまでの情報は割りとよく見かけていて、
とりあえずそれくらいまでは大丈夫だとは思っていましたが
その後10年以上とか経過した場合についてどうなるか若干心配していました。
ちゃちゃおじさんのブログの記事↓で
驚いた!
30年生の接ぎ木について紹介されていました。
この記事によると、どうやらちゃんと管理していればラビットアイ系並に長期に栽培可能なようです。
Top Home
・
寒冷地仕様の接ぎ木について
寒冷地で栽培が難しいとされているスパルタンとかコリンズ、アーリーブルーなどを育てる場合は
やはり根が強いノーザンハイブッシュ系台木などでの接ぎ木ということになりそうです。
では台木となる品種は何が良さそうかというと私が考えるにはブルージェイが良さそうに思います。
ブルージェイは極寒のミシガン州で開発されたくらいだから耐寒性に優れているだろうし、
土壌適応性にも優れ、成長も早いからかなり良い線いっているように思います。
北海道でのブルーベリーの栽培性については↓こちらをご覧いただくと分かるのですが
プルーン、ブルーベリーの品種特性とプルーンの摘果効果
(帯広畜産大� �)
凍害が酷い物については接ぎ木しても無駄かもしれませんが
ブルータ、スパルタン、ノースブルーあたりは凍害というよりも
弱さに問題がありそうなのでこういったものにも
ノーザンハイブッシュ系台木の接ぎ木も効果がありそうに思います。
今回はブルージェイを提案しましたが、以前苗木を販売してらっしゃる那須高原ブルーベリー園さんでは
寒冷地用にパトリオット台木のハイブッシュ系の接ぎ木を販売されていたこともあるので
ノーザンハイブッシュ系台木の接ぎ木の最適な品種についても検討の余地はあると思われます。
Top Home
・
接ぎ木の時期
@)枝接ぎ
普通の枝接ぎは休眠している穂木を使うのがベストのようで、
一方台木の方は動き出しているものが好ましいようです。
台木から水分や栄養が穂木に送られて接合部が互いに連絡を取り合えるようになり
カルスの癒合が果たされる頃に接ぎ穂の芽が萌芽、伸長することが望まれるということのようです。
当地ではラビットアイ系の方が早く動き出してハイブッシュ系の動き出すのは
低温要求時間の関係もあってやや遅れるから
ラビットアイ系が動き出したタイミングで接ぎ木をするのが最善のように思います。
(穂木を冷蔵保存しておけばやや時期を遅らせることは可能だから
失敗した場合は冷蔵保存しておいた穂木 を使って再試行も可能かもしれません)
因みに北海道など寒冷地でラビットアイ系もハイブッシュ系も同時期に動くような地域では
ラビットアイ系を加温して動き出しを早めるとか、
ハイブッシュ系を冷蔵保存などして動き出すのをやや遅らせるのが望ましいかもしれません。
一般的に植物のカルスが最も活発に形成される気温は20〜25度で15度以下ではあまり形成されないらしいです。
このことから春のあまり早い時期に接ぎ木をしてもあまり意味がないようにも思えます。
(今年の春、私は2月半ばにプルの接ぎ木をして5割成功だから十分可能ではあるようです)
A)緑枝接ぎ
枝接ぎの中でも緑枝接ぎの場合は新梢が固まった頃が適期だから
梅雨前あたりの緑枝挿しと同じく� ��いの時期が良さそうに思います。
B)呼び接ぎ
呼び接ぎの場合はどちらも根があって栄養補給は可能であるから
カルスの形成が最も活発な20〜25度の時間が長く最低気温もできるだけ15度以上の時期が良さそうに思います。
当地では4月以降から11月一杯が当てはまるので4月から10月初旬くらいまでなら可能かもしれません。
C)芽接ぎ
芽接ぎの場合の適期は8月下旬から9月で、これは樹液や形成層の動きが活発だからというのが理由のようです。
Top Home
・
接ぎ穂の採取
1)病気などで変色している部分や先端で花芽が多く付いている部分は用いない
2)1次成長が盛んに行われない接ぎ穂(発芽してない枝)を選ぶ
(一次での葉の成長は接ぎ穂のエネルギーを多大に消費するのでエネルギーが
接合部の癒合にまで回らなくなる可能性があるため)
3)親木の施肥は、窒素過多とせず、特にリン酸とカリウムを多めに与える
(葉の成長よりも接合部の癒合を促すため)
4)葉芽と葉芽の間隔が広いものは好ましくなく比較的葉芽の間隔が詰まった枝を用いる
(親木の成長期に窒素過多にすると徒長気味になって葉芽の間隔が広がるから
接ぎ穂の採取をする場合は窒素を控えて太陽によく当て徒長を防ぐ)
5)出来れば台木と同じ太さの接ぎ穂が理想的だが接ぎ穂の方がやや細くても可能である
(台木、接ぎ穂共にタバコくらいの太さが最もやりやすい)
6)穂木は、葉芽を傷つけることなく、接いだ後、2〜3芽ぐらいを残せるように採取する
(作業中に葉芽を傷つけた場合の保険)
※3,4はあくまでも理想であって必ずしもこうでなくても接ぎ木は成功すると思われます。
Top Home
接木の方法
切り接ぎ割り接ぎなどがあります。
切り接ぎをされる方が多いようなので主に切り接ぎについて説明します。
時期は春先から四月上旬頃まで(秋でもできます)
できれば台木はハウスに先に入れておき、穂木より生育を進めておく
ナイフで削り取る場合には台木に対して少しあまるぐらいがカルスがのりやすい
乾燥しないようにパラフイルムで全体を巻く、なければ頭の切り口には癒合剤を塗ります
穂木と台木の接合部には普通のビニールテープなどの方が接着剤が付いてるから楽だそうです。
現在多くの園芸店やホームセンターなどで売られている接木テープでは
むしろ作業しにくいかもしれません。
水揚げは特にする必要はなく日光に当てなければ2時間程度はもつそうです。
他の果樹での様子ですが画像つきで分かりやすいので割り接ぎの
やり方を解説したHPを2〜3紹介しておきます
柿の接ぎ木の方法 (音声による説明があります)
リンゴの切り接ぎ (台木の切る時の指使いなどが参考になります)
もみじの切り接ぎ
2007/01/31追記
形成層はどちらかが付けばいいですが形成層をなるべく多面積に合わせること
なかなかピッタリ合わせ難いですが少なくとも5mm位合わせたほうがいいようです。
肝心なのは油分のない刃 で台木 ホギを削ること。
形成層を面で合わせたら ヒモでもビニテでも良いから固めに縛る。
一番大事なのは雨の進入で、入るとかびたり腐ったりして失敗します。
そのために接ぎ蝋、粘土の様な物で雨から保護します。
割り接ぎに付いては
BlueBerryHouseさんの接木による増殖が画像つきで分かりやすいとおもいます。
引用
ベリーベリーブルーベリーさんの記事や
TMCのブルーベリーさんの掲示板でのインパルスさんの
スレッド投稿日:2006/11/12からも引用させていただいています。
Top Home
接木に用いる素材について
接木の方法でも説明しましたが接木を固定するための素材は
ビニールテープなどのほうが良いそうです。
また穂木を保護するために全体を巻いても
そのフィルムを破って芽が出てくることができテープのように巻きやすいということで
(株)アグリス社のメデールやNewメデール が使いやすいようです。
NewメデールとメデールはBerry's Lifeさんで取り扱っています。
(切り売りもしてくれるようなので趣味でされる方にはお勧めです)
Newメデールは福島天香園さんでも取り扱っています。
(ネットでは紹介されていませんが問い合わせたところ
郵便振込み1570円/巻・送料込みだそうです)
製造元の(株)アグリス社からも買えるようですが6個単位とかになるようです。
Top Home
接ぎ木の練習
趣味で接ぎ木をされる方は接ぎ木をする本数も少なく
おそらく最初からうまくはいかないと思います。
そこで事前にに他の果樹の枝などを使ってナイフの使い方などの練習をしておけば
いざ本番というときに加減が分かって良いかと思います。
人差し指と中指で枝を固定して右手で刃物を持ちますが
右手は添える感じで刃物の先の上に左手の親指を乗せ
親指に力を入れ押し下げる感じで切るのが安全かつ安定しているようです。
右手に力を入れるのは無駄に力が入って切り過ぎてしまいます
見るからに危なそうです。
切り接ぎの練習後
大きな画像はこちら→接ぎ木の練習でごらんいただけます。